成年後見制度の概要について、今迄4回に渡って簡潔に説明してきました。
今回は結びの回として、平成29年3月に閣議決定された「成年後見制度利用促進基本計画」にフォーカスして、成年後見制度の今後の流れ・方向性について見ていきたいと思います。
成年後見制度は平成12年4月に施行されましたが、日本の利用者数は欧米に比べて、かなり少数に留まっています。
最高裁判所の資料によると、平成28年の成年後見制度の利用者数は20万人強です。
他の先進国における成年後見制度の利用者は多く、例えばドイツでの後見制度利用者は270万人と言われていますので、他国に比べて日本の制度利用者数はかなり見劣りがします。
このような現状を踏まえ、成年後見制度の利用を促進すべく、平成28年5月には「成年後見制度利用促進法」が施行されました。
つづく平成29年3月には、「成年後見制度利用促進基本計画」が閣議決定されるに至りました。
この基本計画の対象期間は、平成29年度~平成33年度(概ね5年間)となっています。
内閣府のHPには、「利用促進計画」についてのパンフレット(PDFファイル)も用意されています。
http://www.cao.go.jp/seinenkouken/keikaku/index.html
以下、そのパンフレットに基づき、具体的に見ていくことにしましょう。
まず「成年後見制度利用促進基本計画」のポイントとして、次の3点があげられています。
(1)「利用者がメリットを実感できる制度・運用の改善」
医師や裁判所が本人の生活状況をきちんと理解するための助けとなる情報の伝達。
そしてその情報伝達を確保する支援の在り方の検討。
(2)「権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり」
本人を見守る<チーム>、地域の専門職団体の協力体制<協議会>、
コーディネートを行う<中核機関(センター)>の整備。
(3)「不正防止の徹底と利用しやすさの調和」
預貯金の適切な管理、払戻方法の検討。
続けて基本的な考え方として、次の3つが挙げられています。
(1)ノーマライゼーション
個人としての尊厳を重んじ、その尊厳にふさわしい生活を保障する。
(2)自己決定の尊重
意思決定重視と、自発的意思の尊重。
(3)財産管理のみならず、身上保護も重視
この3つの基本的な考え方をベースとして、4項目の目標が挙げられています。
具体的な内容としては、先にあげた3つのポイント(①「利用者がメリットを実感できる制度・運用の改善」、②「権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり」、③「不正防止の徹底と利用しやすさの調和」)に加えて、④「被後見人の欠格条項の見直し」を挙げ、合計4項目で構成されています。
また基本計画の中には、計画の対象期間となる平成29年度から平成33年度までの、工程表が定められています。
(内閣府のHP=上のリンク中の<別紙1>を参照してください)
この工程表には、「市町村は国の計画を勘案して、市町村計画を策定すること」と記載されています。
地域における成年後見制度の利用促進の体制作りの中心は、市町村です。
伊東市としても、しっかりとした計画を策定をされていることと思います。
しかし計画立案及び、それに基づく組織を作る事自体が、真のゴールではありません。
地域の権利擁護支援の強化が、真のゴールであることは、疑いを挟む余地もない事です。
権利擁護支援の必要な人達にとって、住みやすい環境を現実に作ること、それこそが一番重要なことです。
今後ますます高齢化の進む日本、そして伊東市も例外ではありません。
市の統計データによると、平成30年3月末における伊東市の総人口は、69,597人となっています。
前年同月末に市の総人口は、かろうじて7万人を超えていました。
しかしこの1年の間に750人近くの人口が減少して、とうとう6万人台になってしまいました。
そして平成30年3月末における65歳以上人口は28,548人となっていて、65歳以上の人口構成比は41%となっています。
また更に75歳以上の人口は14,453人で、その構成比は20.8%となっています。
昨年と今年の比較の観点から言うと、65歳以上人口は昨年に比べ260人増加しています。
75歳以上人口の方は、それより増加数が多く、昨年より549人増えています。
今後も「人口減少」そして「高齢化」は、確実に進行していくものと思われます。
成年後見をはじめとする様々な高齢者施策が、今後ますます重要になってくる事でしょう。
そして高齢者だけでなく、若い世代にとっても他人ごととは考えず、地域の問題として正面から捉えていく事が、これからは益々重要になってくると思われます。
この伊東市に住む全ての人が安心した毎日を送れるため、私も専門職の端くれとして、
しっかりと今後の行方を見守っていきたいと思っております。