top of page
  • 執筆者の写真静岡県伊東市 かねこ行政書士事務所

Ⅳ.後見の手続

今回は後見の手続きについて、東京家庭裁判所の「成年後見申立の手引」を参考にして、申立から後見開始までの流れを確認します。

①申立までの流れ

まずは申立をする裁判所ですが、本人の住所地(住民登録地)を管轄する家庭裁判所となります。

申立ができるのは、本人、配偶者、4親等内の親族、成年後見人等、任意後見人、成年後見監督人等、市区町村長、検察官になります。

申立準備としては、次の流れとなります。

 1.必要書類を集める

 2.申立書類の作成

 3.申立書類の提出

また「必要書類」の内容は、次の通りです。

 (1)申立書類(申立書、申立事情説明書、親族関係図、本人の財産目録及びその資料、

         本人の収支状況報告書及びその資料、後見人等候補者事情説明書、

         親族の同意書)

 (2)戸籍謄本・住民票(本人及び後見人候補者)

 (3)登記されていないことの証明書(本人)

 (4)診断書(成年後見用)、診断書付票/鑑定書

 (5)その他(都道府県により、提出を義務付ける書類が他にある場合があります。)

そしてとても重要なことですが、申立の取下げをするには、審判の前であっても家庭裁判所の許可が必要となります。

「(公益性や本人保護の見地から)後見開始の審判をすべきであるにも関わらず、取下げにより事件が終了してしまうことが相当ではない場合があるから。」(東京家庭裁判所「成年後見申立の手引」)と言う理由からです。

具体的事例としては、「申立人が選んだ候補者が、後見人に選ばれそうにないから申立を取り下げる」と言う事は、認められない可能性が高いと言う事です。

②申立後の流れ <申立~審理>

申立書が整ったら、いよいよ申立をします。

 (1)申立人・後見人等候補者の面接

   申立日に即日面接となるため、家庭裁判所に必ず事前予約をしておきます。

   面接当日には、準備しておいた<必要書類>を持って行きます。

   (最近は郵送などで事前に提出する傾向にある様です。)

 (2)審理

   審理の内容は、次の通りです。

   a.本人調査(本人との面接)

   b.親族の意向照会

   c.<必要な場合は>鑑定 (平成28年度の鑑定実施は全体の約9.2%)

③審判

審理が終了すると、家庭裁判所は後見等の開始の審判をし、あわせて最も適任と思われる人物を成年後見人等に選任します。

後見人等は一人だけではなく、複数選任される場合もあり、また監督人が選任される場合もあります。

④審判の確定と登記

審判から2週間の抗告期間を経て、審判が確定します。

ここで正式に、「後見人等」に就任となります。(当然ここまでは後見業務はできません。)

審判が確定すると、家庭裁判所は東京法務局に審判内容の登記を依頼します。

後見登記が終了したら、後見人は「登記事項証明書」を取得して、それをもって金融機関、役所、不動産取引などを行います。

後見人等は就任後裁判所に対し、「初回報告」の義務があります。

「初回報告」とは、本人の財産目録と年間収支予定表の提出の事です。

選任後1カ月以内の提出が、民法に規定されています。(民法853条1項)

以上、ざっと流れを見てきましたが、時間的なことを最後に付け加えます。

東京家庭裁判所の「成年後見申立の手引」には、「申立を受け付けてから審判がされるまで1~2カ月かかります。」とあります。

審判がなされた後、2週間の抗告期間を経て登記が依頼され、その登記完了までにも通常数週間かかります。

つまり後見人等が登記事項証明書を手にするまで、申立から2~3カ月はかかってしまうと言う事です。

そして当然ですが、申立に先立つ準備の期間を含めると、さらに時間がかかります。

後見制度を検討する際は、時間的なことにも十分注意しておく必要があるでしょう。

また申立にかかる費用は、概ね2万円~10万円程度です。

費用の点からもう一つ、後見人の報酬について書いておきます。

後見が開始した後は、後見人に対しての報酬が発生します。

(後見人が申請しない場合は、もちろん報酬は発生しません。親族が後見人になった場合などは、多くの場合報酬を請求してないと思われます。)

報酬額は法定されてないため、審判の中で家庭裁判所が検討し決定します。

家庭裁判所の「成年後見人等の報酬のめやす」と言う文書によると、本人の財産状況により、1000万円までの場合は月額2万円、1000万円を超え5000万円までは月額3万円~4万円、5000万円を超える場合は月額5万円~6万円となっています。

監督人がつく場合には別途報酬が発生し、目安は上記の約半額となります。

閲覧数:29回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Ⅴ.成年後見制度~今後の方向

成年後見制度の概要について、今迄4回に渡って簡潔に説明してきました。 今回は結びの回として、平成29年3月に閣議決定された「成年後見制度利用促進基本計画」にフォーカスして、成年後見制度の今後の流れ・方向性について見ていきたいと思います。 成年後見制度は平成12年4月に施行されましたが、日本の利用者数は欧米に比べて、かなり少数に留まっています。 最高裁判所の資料によると、平成28年の成年後見制度の利

Ⅲ.任意後見と民亊信託

①法定後見と任意後見の違い 法定後見は「判断能力が低下した後」で、「家庭裁判所が判断」し、「家庭裁判所が後見人を決定」します。 一方、任意後見は、「判断能力が低下する前」に、「自分の意思で契約」し、「自分で後見人を決め」ます。 これが、両者の大きな違いです。 また更に後見開始後も、任意後見では(法定後見と違い)資格のはく奪や権利の制限がありません。 法定後見の方は前回も書いた通り、現状180余りの

Ⅱ.後見の種類と概要

①後見の種類 広義の後見制度には、「未成年後見」と「成年後見」の2種類があります。 「未成年後見」とは、親権を行う者がいない場合、若しくは親権を行う者が管理権を有しない場合に、その未成年者の法定代理を行う制度の事です。 一方「成年後見」とは、「ある人の判断能力が精神上の障害により不十分な場合(認知症高齢者、知的障害者、精神障害者)に、その人を法律的に保護し、支えるための制度です。 (成年後見の定義

bottom of page