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  • 執筆者の写真静岡県伊東市 かねこ行政書士事務所

Ⅰ.後見制度の現状

①高齢化社会の到来

昨年話題になった本に、「未来の年表」(河合雅司 著;講談社現代新書)があります。

そのショッキングな問題提起に接し、私も認識を改める部分が多々ありました。

主だったものを目次から引用すると、次の通りです。(すべて日本の事です)

(以下、目次より引用)

2020年 女性の2人に1人が50歳以上に

2024年 3人に1人が65歳以上の「超・高齢者大国へ」

2026年 認知症患者が700万人規模に

2033年 全国の住宅の3戸に1戸が空き家になる

2040年 自治体の半数が消滅の危機に

(引用終了)

「2024年の超・高齢化大国へ」というのは、一般に「2025年問題」と言われています。

団塊の世代全員が75歳以上に到達するのは、実際には2024年の事です。

様々なシミュレーション方法があるとは思いますが、一つの予測としてこれらの項目を見たとき、ぞっとするのは私だけではないでしょう。

この先20年余りの間に、想像もつかないような世の中が、目の前に現れてくるのでしょう。

総務省の「人口推計」(2017年6月1日現在)によると、2017年における日本の高齢化率(総人口における65歳以上の割合)は、既に27.6%にも上っています。

②成年後見制度の変遷

現在の成年後見制度は、2000年4月に介護保険制度と同時に施行されました。

そしてこの2つの制度は、高齢者施策の「車の両輪」と呼ばれました。

最高裁判所の資料によると、2016年の成年後見制度の利用者数は、203,551人です。

ドイツでの後見制度利用者は270万人と言われ、欧米に比べて日本の利用者数は、かなり少ないのが現状です。

利用者数の差は、この制度の使い勝手にあるのではないかとの反省の下、2016年には成年後見制度利用促進法が施行され、2017年には利用促進基本計画が閣議決定されました。

また現在、被後見人・被保佐人に関する資格制限の削除なども、論議されています。

成年後見制度を利用するには、家庭裁判所への申立が必要です。

申立ができるのは、配偶者、四親等内の親族等、そして市町村長となっています。

昨今の独居老人の増加や家族関係の希薄化のためか、近年、市町村長の申立件数が増加しています。

2006年には市町村長による申立は全国で1,033件でしたが、10年後の2016年には6,466件と、6倍を上回る件数を数えています。

また法定後見の類型は「後見」、「補佐」、「補助」の3種類ありますが、後見開始の審判の件数は「後見」が圧倒的に多く、2016年の実績は「後見」25,556件、「補佐」5,034件、「補助」1,204件となっています。

ちなみに2016年12月末現在の成年後見制度の利用者数は、次の通りです。

「後見」161,307人、「補佐」30,549人、「補助」9,234人、「任意後見」2,461人。(合計203,551人)

また制度が始まった当初は、成年後見人、保佐人、補助人に選任されるのは圧倒的に親族が多かったのですが、専門職(一般に弁護士・司法書士・社会福祉士)の受任が多くなってきています。

2000年の受任者の割合は、「親族」90.9%、「弁護士」4.6%、「法人」0.4%、「知人」0.9%、「その他」3.2%でした。

一方2016年になると、「親族」は28.1%まで減ります。逆に「弁護士」23.2%、「司法書士」27.1%、「社会福祉士」11.5%、「法人」6.3%、「その他」3.8%となります。

家庭裁判所へ申立をするときに、誰に後見人を依頼したいか希望は出せます。しかし必ずしも希望通りにはならず、家庭裁判所の判断により決定されます。

金銭管理等の面から、平成20年代の半ば頃から一定以上の財産を持つ被後見人には、親族を選ばない傾向が増えてきているようです。

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