相続財産の調査は、相続人の調査と同じタイミングで始め、同時に進行させます。
一般に相続財産の調査とは、①不動産の調査、②預貯金の調査、③負債(借金)の調査が、その主な内容です。
この他にも高価な動産などがあれば、調査をして、財産目録にリストアップしておく必要があるでしょう。
ほとんどの場合、不動産については登記がなされています。
登記されている不動産については、法務局で「登記事項証明書」を取り寄せて権利関係を確認できます。
また不動産の数が多い場合などは、市区町村役場で「固定資産税評価証明書」を取得することにより、その市区町村における登記済みの不動産を、漏れなく確認できます。
さらに未登記の不動産については、市区町村役場で「名寄せ台帳」を取り寄せて確認します。
公衆用道路は課税証明書には載らないので、その場合も「名寄せ台帳」での確認が必須です。
預貯金の調査は各金融機関の口座ごとに、正確な残高を把握します。被相続人の貯金通帳やキャッシュカードを頼りに、銀行口座を特定していきます。
金融財産という意味では、証券会社の口座も同様です。
金融機関の口座の把握には、金融機関からの被相続人宛の郵便物などが、発見のための重要な手掛かりになります。
この際忘れてはならないのが、ネット銀行やネット証券の口座です。ネットの中の取引のため、見落としかねないので注意が必要です。
ネット銀行やネット証券、またその他のデジタル遺品に対する備えとして、エンディングノートの活用が望まれるところです。
金融関係からの借入金の有無も、確認をしておきます。
万が一負債が資産を上回るようなときは、<相続放棄>という選択肢もあり得ます。
しかし相続放棄をする場合には、「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内にしなければならない」と、民法に定められています。(915①)
そしてこの期間に相続の放棄又は、限定承認をしなかった場合は、単純承認をしたものとみなされます。(922)
スピード感をもって、財産調査を完了しなくてはならないゆえんです。
そして美術品や自動車など、価値の高い資産がある場合も、財産目録に加えておきます。
このようにして相続財産の目録が整ってきたら、次に相続税について確認をします。
相続税の基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」です。
相続財産がこの金額をこえる場合、相続税が発生する可能性が出てきます。
その際は、税理士さんへの相談をおすすめします。
(行政書士からの依頼で、税理士への連携も可能です。)
相続財産の調査は、それなりに手間のかかる作業となります。
残された家族のためにも、エンディングノートを活用することを、強くお勧めします。
「遺言書を書いたから大丈夫」なのでしょうか?
遺言書には通常、主だった財産を書き留めます。
いわゆる「その他の財産」まで、詳しく書くことは普通はありません。
自分の身の回りの振り返りも兼ねて、当事務所ではエンディングノートの活用を強く推奨いたします。
(エンディングノートの活用については、別の機会に詳しくお話したいと思います。)