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  • 執筆者の写真静岡県伊東市 かねこ行政書士事務所

Ⅲ.任意後見と民亊信託

①法定後見と任意後見の違い

法定後見は「判断能力が低下した後」で、「家庭裁判所が判断」し、「家庭裁判所が後見人を決定」します。

一方、任意後見は、「判断能力が低下する前」に、「自分の意思で契約」し、「自分で後見人を決め」ます。

これが、両者の大きな違いです。

また更に後見開始後も、任意後見では(法定後見と違い)資格のはく奪や権利の制限がありません。

法定後見の方は前回も書いた通り、現状180余りの欠格条項があり、多くの士業、公務員、医師、教員、会社役員などになる事(続ける事)ができません。

2018年1月10日付の日経新聞には、成年後見制度の利用に伴う欠格条項に関する、次のような報道も載ってました。

「成年後見制度利用者の就業を認めない警備業法の規定は、職業選択の自由を保障した憲法に違反するなどとして、勤務先の警備会社を退職せざるを得なくなった岐阜県の30代男性が10日、国に100万円の損害賠償と、会社に社員としての地位確認を求める訴訟を岐阜地裁に起こした。」(日経新聞 記事より)

任意後見契約を結ぶと法務局に登記されますが、この登記があると「任意後見優先の原則」が働き、法定後見の審判を受ける事は原則無くなります。

また将来認知症になり後見を受ける事になっても、任意後見には資格のはく奪や権利の制限がないので、すぐに上のような事態になることはありません。

権利義務関係についても、法定後見制度は法定されていますが、任意後見制度にあっては後見人と被後見人の契約によって定められます。

②任意後見契約の種類(3タイプ)

任意後見は基本的に、契約締結後に家庭裁判所に任意後見監督人の選任申立をして、監督人が選任された時点から後見が開始されます。

その「後見開始の時期」の置き方により、一般に任意後見契約は3タイプの分類がされています。

その概要は、次の通りです。

1.<将来型>

 本人の判断能力が十分な間に、任意後見契約のみを締結するものです。

 本人の判断能力が低下したときに、家庭裁判所に監督人選任の申立をして、任意後見を

 開始させます。

  1. <移行型>

 こちらも本人の判断能力が十分なうちに、契約を締結します。

 しかし<将来型>と違い、「見守り契約」や「財産管理契約」などの委任契約を結び、

 本人の判断能力の低下前から、日常の心配事を解消していこうというタイプです。

 任意後見制度の良さが、最も発揮される契約と言えるでしょう。

  1. <即効型>

 すでに判断能力が少し低下していて、契約締結後はすぐに家庭裁判所に監督人専任の

 申立を行い、任意後見を受けたいというときに利用されます。

③民亊信託

さてここまで任意後見制度についてお話してきましたが、最近注目されているのが「民亊信託」です。

一般になじみのある信託銀行などによる信託は、「商事信託」と分類されます。

商事信託とは信託会社や信託銀行が受託者となり、業として信託を行うものです。

それに対して民亊信託とは、平成18年12月の信託業法の改正により誕生した信託です。

営利目的でなければ(反復性がなければ)、信託業免許を持たない個人や法人でも受託者になれるようになりました。

信託の登場人物には、財産を委託する人=「委託者」、財産の信託を請け負う人=「受託者」、そして信託財産から生じる利益を受ける人=「受益者」の3者がいます。

民亊信託を使えば、財産管理を家族や信頼のおける知人に任せることができます。

また遺言では困難な、数次承継も可能となります。

つまり遺言や後見では対応できないことも、民亊信託では可能になる使い勝手の良さがあると言えます。

④まとめ

個々人の状況や思いにより、どのような対応が良いのかは千差万別です。

と言うのも、平均寿命が延び以前とは比べようもない長寿社会になったため、認知症になる人が増えているからだと考えます。

2025年には日本の認知症患者の数は、730万人(65歳以上の3人に1人)になるという予測もあります。(内閣府「高齢社会白書」2016年)

このような状況の中、もはやライフサイクルの中に<認知症>で生きる期間を考慮に入れ、そのスキームで人生や財産管理を考える必要があるのではないかとさえ思えてきます。

老後の計画=「終活」を考える事が、ますます複雑になってくるのは明らかでしょう。

人により、状況により、また思いにより、最適な選択肢は変わってきます。

遺言・法定後見・任意後見・民亊信託・見守り・財産管理契約・死後事務契約・尊厳死契約など、様々な選択肢があります。

その中から、最適な組み合わせを提案すること。

またその後の状況の変化に対応すべく、提案のメンテナンスを図ること。

これらは私たち専門家の大きな使命であると、日々その責任の重さを通関しております。

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