「相続人の調査」、「相続財産の調査」が終了して、相続人・相続財産が確定したら、いよいよ「遺産分割協議」に移ります。
<どの相続人>が<どの財産>を継承するのか、それを具体的に決めるための話し合いをします。
遺言書があれば通常は、遺言書に沿って遺産の分割を進めればよいのですが、遺言書がない場合には、相続人全員の合意のもと、相続財産の具体的な分割を協議する必要があります。
相続人調査で確定したすべての相続人が、話し合い、財産の分割に関して全員の合意する事が、遺産分割の前提です。
ただし相続人の中に、次のような人が含まれる場合は、注意が必要です。
①未成年の子供が相続人で、その親も同時に相続人となる場合
この場合は、利益相反の関係となるため、未成年の子供に特別代理人を選任しなくてはなりません。
②相続人の中に認知症の人がいる場合
相続人の中に認知症の人がいる場合は、その相続人のために後見人を付ける必要があります。
③相続人の中に行方不明者がいる場合
行方不明者がいる場合には、家庭裁判所に不在者の財産管理人の申立をして、その財産管理人が遺産分割協議に参加することにより、遺産分割協議が成立します。
また7年以上に渡り生死不明の状態であるときは、家庭裁判所に対して<失踪宣告>を申立てることもできます。(30条)
相続人全員による協議が整ったら、その内容を文章にします。
そのようにして出来上がった遺産分割協議書には、相続人全員の署名と実印での押印が必要です。
そして遺産分割協議書は銀行や不動産登記の時に、必ず必要とされます。
実務的には、遺産分割協議書と相続人の戸籍謄本、印鑑証明、各銀行所定の相続手続書類などを用意して、実際の相続手続を行います。
昨年より「法定相続情報証明制度」が始まり、こちらを利用すれば、戸籍謄本の束をもって金融機関の窓口を行き来する必要がなくなりました。
「法定相続情報証明制度」とは何でしょう?
法務省のホームページより、説明を引用します。
(以下、法務省ホームページより引用)
登記所(法務局)に戸除籍謄本等の束を提出し,併せて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を出していただければ,登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付します。 その後の相続手続は,法定相続情報一覧図の写しを利用いただくことで,戸除籍謄本等の束を何度も出し直す必要がなくなります。
(引用終了)
遺産分割協議書の作成から、実際の相続手続までの流れは、ざっと以上のような流れになります。
流れを淡々と文章にすると簡単そうですが、感情やさまざまな思惑が入り交じり、一筋縄ではいかないこともままあります。
やはり遺言書を残しておくことは、とても大事なことなのです。