公正証書遺言のお手伝いをさせて頂いたお客様がお亡くなりになり、引き続き相続のお手伝いもさせて頂いた時の話です。
故人は会社勤め時代にパソコンやインターネットに習熟し、ご年齢の割にはパソコンやインターネットを活用されていらっしゃいました。
一方、奥様はパソコンやインターネットには全く興味がなく、一切ノータッチの状態でした。
お亡くなりになったご主人は、インターネットはもちろんのこと、メールやネットバンク、更にはネット証券までもご利用され、日常の文書もパソコンで管理されていました。
お二人にはお子様がいらっしゃらず、ご主人がお亡くなりになったら、さぞお困りになるだろうなと心配に思っていました。
そこである時ご主人に、パソコンとインターネット関連のIDとパスワードを、紙ベースで管理するようにお勧めすることにしました。
そしてご主人がお亡くなりになったあと、心配した通り、調べて欲しい事があるのでパソコンを起動させて欲しいと、奥様からご依頼が入りました。
もちろん奥様にお聞きしてもパスワードの事は何もご存知なく、パソコンを立ち上げる事すら不可能に思えました。
「何か心当たりのワードはありませんか?」と尋ね、記憶を辿って頂いているとき、奥様が何かを思い出されたような表情になりました。
奥の部屋に入り、一冊のファイルを持ってお戻りになりました。
中にはパソコンのログインパスワードを始め、各種口座やクレジットカードのパスワードとIDが、完璧に記してありました。
このファイルの存在により、全ての情報を確認することができました。
もちろん全ての操作を、奥様の目の前で行ったことは言うまでもありません。
銀行口座の取引明細やクレジットカードの請求明細の確認、それにサブスクリプション(一定期間の利用に対して代金を支払う課金システム)の痕跡を見つけたり、決済口座が判明したことにより、事後処理を的確に打つこができました。
奥様は家計に何もタッチしてなかったのですが、まるで故人が側で教えてくれているかのようにスムーズ進みました。
「終活」の威力を、身をもって体験した瞬間でした。
故人は私の勧めを聞き入れてくださり、少しずつIDとパスワードを書き進めてくださっていたようです。
お役に立てたことを嬉しく思うとともに、本当に助かったと胸をなでおろした瞬間でもありました。
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