<尊厳死宣言>
前回取り上げた終末医療に関して、「尊厳死宣言書」を軸に再度検証してみます。
「尊厳死宣言書」とは、完治する見込みのない病気などで最期の瞬間が迫っているときなどに、過度な延命治療をせず自然な死を迎えたいという思いを、家族や医療関係者に伝えるための文書です。
法的拘束力はありませんが、例えば延命治療について自分と異なる意見を持つ家族がいる場合、公的な文書を残しておくことで明確な自分の思いを伝えることができます。
もちろん自書により宣言書を作成することも可能ですが、公的な第三者的機関を利用して自分の意思を表現することは、より強い意思を表すことの客観的根拠ともなります。
第三者的機関を利用しての宣言書を作成する方法は、①日本尊厳死協会の宣言書(リビングウィル)と、②公証役場において作成する尊厳死宣言公正証書の2つがあります。
先に申し上げた通り、法的拘束力はありませんが、公的機関を利用して作成していることで、周囲の人に本人の強い意思を伝えることが期待できます。
日本尊厳死協会は、一般財団法人です。東京の文京区本郷に本部があり、日本全国に8つの支部を置いています。
HPには協会やリビングウィルについての詳しい記事が出ていますので、尊厳死宣言への理解を深めるためにも、一度webサイトを閲覧してみることをお勧めします。
次に公証役場で公正証書として作成する場合ですが、大まかな流れは次の通りです。
① 尊厳死宣言書に記載する内容を考え、原案を作成する。
② 原案を持ち公証人と打ち合わせを重ね、宣言書の文案の作成を公証人に依頼する。
③ 公証人から出てきた文案を確認して、必要な構成を行う。
④ 公証役場にて、尊厳死宣言公正証書の作成を行う。
ざっと、このような流れになります。
法的拘束力はないとは言え、本人の希望であることは確かで、特別な事情がない限り、全く無視されることはないでしょう。
また親族間で尊厳死についての意見が分かれることが考えられる場合にも、本人の意思が明確に表現されていれば、後々の争いの種になることはないでしょう。
これらの利点を考え合わせると、尊厳死宣言書を残すことは非常に意義のあることだと、お分かりいただけると思います。
また意識のない状態になってしまえば、自分では意思を表現できない状態に陥ります。
そのような時にも尊厳死宣言書の用意があれば、自分に代わって意思を表明してくれます。
現在の日本の医療は「生かす」医療です。病院においては自然死を避け、できる限りの治療を続けるというのが基本です。
意識のないまま生き続けることは不本意だと日頃は思っていていても、意識がなくなってからでは訴えることはできません。
また植物状態での延命措置が長期間に及べば、その場合の家族の経済的負担は計り知れない額になることが予想されます。
どんな状態になっても命をつなぎたいと願う事も、もちろん間違いではありません。
どちらにせよ、自分の願う最期を遂げるためにはどうするか?
意識のない状態で生き延びたくないと考えるのであれば、尊厳死宣言書は必要な選択だと思います。
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