静岡県伊東市 かねこ行政書士事務所

2018年5月28日3 分

遺言 Ⅲ

<自筆証書遺言>

自筆証書遺言については、民法968条に定めがあります。

第1項では形式面の規定(全文、日付、氏名の自書及び、押印)が定められ、第2項には加除訂正に関する規定が定められています。

自筆遺言証書は、自分一人で作成し、完結させることが可能です。

その為公証人等への費用が発生することもなく、経済的と言えば経済的ではあります。

そして一人で作成できるので、遺言の内容やその存在を、誰にも秘密にしておけます。

このような事が、自筆遺言証書のメリットと言えるでしょう。

一方デメリットとしては、次の事があげられるでしょう。

せっかく用意した遺言であるにも拘らず、誰にも知らせずしまっておく為、発見されない危険があります。

遺産分割協議がすっかり済んだ後に発見され、もう一度遺産分割協議をやり直す事態を招く恐れが生ずるかもしれません。

またあくまで自己管理のため、紛失のリスクも否定しきれません。

遺言が発見されたとしても、形式不備のため、遺言書そのものが無効になる恐れもあります。

誰のチェックも受けずに作成したため、法的な要件を満たしていない場合や、不動産等の指定が不明確であったり、せっかくの遺言者の遺志が遺産分割に反映されない恐れが付きまといます。

自筆遺言証書の場合であっても、専門家のチェックや支援を、強くお勧めする所以です。

また遺言作成についての証人等が不要なため、偽造や変造の恐れも生じやすく、トラブルにつながり易いとも言えます。

自筆遺言証書を選ぶ場合は、このようなメリット・デメリットを、きちんと見極めたうえで判断すべきでしょう。

また自筆遺言証書は、相続開始後に家庭裁判所で、「検認」手続を経る必要があります。(民法1004条)

「検認」の意義とは、遺言書の状態を確定し、その現状を明確にするものであって、遺言書の実体上の効果を判断するものではない、とされています。

この「検認」が、遺族の負担を増すことにつながる事も、デメリットの一つと言えるかもしれません。

それではここからは、民法に規定される自筆遺言証書の要件を、一つづつ確認していきましょう。

◎「自書」について

筆跡が本人のものであることは言うに及ばず、書いた当時本人に遺言を書く能力が備わっている必要があります。

字を書くことができたか、遺言の内容を弁識する能力があったか、などが問題になります。

字を書くことができないからと言って、<録音(音声データ)>や<録画(動画データ)>による遺言は、言うまでもなく法律的には無効になります。

◎「日付」について

暦上の特定の日を表示するのが基本ですが、客観的に特定できるなら有効です。

例えば「70歳の誕生日」とか「定年の日」などは、客観的に日付を特定できるため有効です。

一方「〇月吉日」の場合は、特定が不可能なので、遺言書自体が無効となります。

◎「氏名」について

氏名も遺言者が特定できれば有効で、本名である必要はなく、通称・ペンネーム・芸名も可能です。

苗字や名の一方でも、遺言者が特定出来るのなら有効となります。

◎「印」について

実印である必要はなく、認印で通用します。

拇印や指印でさえも、認められます。

◎「加除訂正」について

他人による改ざんでないことを明確にする意図から、厳格な方式規定がされています。

実際には訂正が必要な場合には、できれば全文書き直すことをお勧めします。

自筆遺言証書の概要は、以上の通りです。

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